委員会・分科会活動/ダム事業のITに関する調査分科会
3. アンケート集計結果
3.4 ダム建設現場(施工者)
3.4.1 データの電子化
 資料の電子化・電子納品によるコストの縮減効果については、無回答・わからないとする意見が67%と最も多く、コスト増、コスト縮減とする回答はそれぞれ23%、4%であり、施工者にとっては、どちらかといえば非効率、コスト増と感じているようである。なお、今後の展開次第では業務の効率化につながるという意見もある。
 電子化・電子納品に関する企業者との協議については、23%が工事着手時に実施した、29%が工事を進めながら実施した、46%が電子化に関する打合せを行っていなかった。
 電子化・電子納品の方法決定については、受発注者双方で検討したのが48%であった。企業者側からの指示によるものは13%と少なく、受注者側からの提案によるものは8%であった。
3.4.2 CAD
 企業者からCAD データが提供された場合について、施工時に提供されたCAD データを利用しているのが79%であった。その提供されたCAD データは、DWG 形式が60%であり、DXF 形式を含めると74%となっている。SXF 形式で受領したとの回答はわずか2%であった。また、企業者から提供されたCAD データは、「CAD 製図基準(案)」に準拠していたとの回答もわずか2%であった。
 施工期間中のCAD データのやり取りは、オリジナルCAD データで行ったとの回答が32%であり、SXF 形式で行ったとの回答は2%であった。
 企業者への納品(変更・完成図面)は、「CAD 製図基準(案)」に準拠せずにおこなったとの回答が36%ある。準拠して納品したとの回答はわずかに4%であった。
 3次元CAD については、導入あるいは導入を考えているとの回答は10%であった。
3.4.3 電子納品
 紙ベースの書類提出と電子データの2重提出が求められ、無駄が多く非効率であるとの意見が多い。また、CAD データについては、製図基準に制限が多く自由度が少ないため活用しづらく、相当の技術レベルに達していないと運用が難しいとの意見がある。
 現時点では、省力化、ペーパーレス化になっているとは言い難く、改善の余地があるとの意見も多い。また、電子納品を行うことにより、不要と思われる内容のものまで電子化を要求されたり、企業者・担当者によって認識に差があるなど、企業者、受注者共に知識が不足しているとの意見がある。これに反し、電子納品は写真、図面のみであり特殊な技術を必要としないとの意見がある。
3.4.4 ITの高度利用
 現場施工管理におけるGPS の利用は、23%であった。そのうち20%が測量に利用され、その他には自動化・無人化などの建設機械の運転管理・施工管理などに利用されている。
 また、これまでの技術開発では、ケーブルクレーン運転の自動化や、土木工事施工支援システム、盛立工における施工機械へのIT 技術活用による品質管理・施工管理の合理化など、さまざまな方面で実施されている。
3.4.5 電子データの利活用
 ダム建設現場(施工者)の回答も施工者の本社等と似通った傾向が見られる。
 業務の効率化を積極的に進めるためには、企業者との連携が不可欠となるが、調査の結果から、企業者・受注者間のデジタルデータやソフトウエアの規格は、ほとんど統一されていないことが分かった。また、データの譲渡等に関しても、ダム建設現場(施工者)へのデータのやりとりの意識は低く、企業者と、受注者の意識の格差がある。企業者からのデータの譲渡で多くの割合を占めているものは、水文観測データや地質関連データ、ダム基礎の止水設計、洪水吐設計、転流工設計、施工計画関連のダム施工機械設備のレイアウト等のデータや地質データとなっている。
3.4.6 ダムIT化に期待する将来像
 今後開発していきたい技術として、GPS を利用したコンクリートダム測量システム、三次元CAD ダムの機能拡充、施工管理システムの進化による品質・出来型管理分野の充実など、多くのテーマがある。
3.4.7 情報の共有
 企業者との電子データ交換・共有方法については、電子メールが圧倒的に多く53%を占める。次いで、記憶媒体の受渡しが31%、ネット上の受発注者共有サーバーの利用が10%となっている。
 企業者が指定した情報共有システムについては、受注者側は「できれば使用したくない」との回答が42%であった。その理由として、実際にはシステムへの入力・保存と同時に紙での提出が求められ(2 重提出)、負担が大きいなどの意見がある。
3.4.8 現場通信環境等
 ブロードバンド接続が普及しているが、建設現場ではナロウバンド接続が比較的多く、57%を占めた。
 インターネットについては、個人のパソコンからアクセス可能としているとの回答が23%ほどあるが、62%は特定のパソコンからのみアクセス可能としている。
 事務所と現場職員との通信手段は、53%は携帯電話、20%はPHS、14%は無線、9%は有線を用いている。
 現場作業状況確認用モニターは、30%の現場で事務所内に設置されている。気象情報は、71%の現場がインターネット(無料提供)で入手しており、情報提供会社と契約している現場は19%であった。
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