委員会・分科会活動/ダム事業のITに関する調査分科会
3. アンケート集計結果
3.5 ダム建設現場(施工者)
3.5.1 データの電子化
 全体の51%が業務データの電子化についてメリットとデメリットの両方があると答えている。
 メリットについての具体的な意見では、電子化により保管場所の省スペース化や、ペーパーレス化、検索性の向上、再利用等による業務スピードのアップなどがあげられている。
 しかし、デメリットの具体的な意見では、不要な書類が多い、閲覧性が紙より劣る、情報の氾濫・煩雑化などが上げられており、メリットとデメリットについて同様の項目において、相反する意見が存在するという状況である。また、電子化を積極的に進め、ペーパーレス化を推進しているのは10%となっている。
3.5.2 CAD
 受注者の52%が、企業者から譲渡されたCAD の活用を行っていたと、企業者が認識している結果となった(活用されていたデータは完成図と施工図が37%と最も多い)。
 しかし、施工期間中の図面については、やりとりしている中の全体の19%が紙によるもので、26%がCAD データという結果となっている。
3.5.3 電子納品
 成果品が電子納品で実施された場合に、作業効率が上ったとしたのは6%と低かった。しかしながら、定着化が進めば効率化が進むと考えられるとしているものが29%となっている(実態がよくわからないとの答えも31%あった)。
 さらに、コストについては、コストダウンが図れたと考えるところが5%、コストアップとなったと考えているところが12%、わからないが45%となっている。
3.5.4 ITの高度利用
 技術開発を行ってきたのは11%に留まっている。
 具体的に開発を行ってきた技術の例として、工事データ管理システムの構築、設計支援システム、リフトスケジュール作成プログラム、施設の遠隔操作及び監視などがある。
 また、今後技術開発を行いたいと考えているのが30%で、ダム建設時の情報を総合的に管理出来るシステム、管理業務のシステム化、堤体挙動システム、ダム技術に関する技術資料等の検索システム導入などが、望まれている結果となっている。
 技術開発を行う必要性を感じていない機関も27%あり、理由としては、新たに開発を行う必要はなく、既にある技術で十分であるなどといった意見もある。
3.5.5 電子データの利活用
① データの譲渡
 調査関連資料の譲渡は、ダム建設現場(施工者)へ譲渡する割合より、業務受注者への譲渡を行う場合が傾向として多い結果となっている。
 業務受注者へデータを譲渡しているものの中で大きな割合を占めているものは、水文関連データの割合が70~80%程度ともっとも多く、その他に、環境関連のデータ、地質関連データ、ダム基礎設計に係る基礎岩盤データ、洪水吐、取水放流、転流工等の設計関連データ等がやや多い結果となっている。工事受注者へは、施工関連における施工機械設備、掘削と基礎処理関連データが他と比較して高い傾向がある。
② デジタルデータの規格化
 デジタルデータについて、受発注者間では規格はほとんど統一化されておらず、最も多い水文観測データでも、約20%程度となっている。
③ データフォーマットの共通化
 データフォーマットを共通化すると合理化に寄与すると考えられているものは、水文観測データが約50%程度、次いで、貯水池の水質、地質関連データ、基礎岩盤の強度評価や、ダム基礎の止水設計、コンクリートダム材料、構造物の設計関連や施工関連データとなっている。
④ ソフトウエアの統一化
 企業者、設計コンサルタント、施工会社において、ソフトウエアを統一化すると合理化に寄与できるものについては、他のデータと同様に、水質・地質関連の割合が多い結果となっている。その他、管理段階の貯水池管理データなども多い傾向がある。
3.5.6 ダムIT化に期待する将来像
 IT 化により効率的な事業実施が出来るようにシステム化が図れればよいなどの意見や、ダムの管理におけるIT 化により、さらなる効率化を行う必要があるのなどの意見もある。その他、自宅から遠隔操作によって施設管理などを行えるシステムの実現を望む声もある。
3.5.7 情報の共有
 CALS/EC を利用した、指示簿、協議簿等のやりとりについては、29%が活用したことのある状況となっている。さらに、ダム事業に特化した場合には、導入している状況が全体の12%となっている(ただし、導入を考慮している機関も19%ある)。
 しかし、導入後に、取りやめている機関もあるなど、その効率化については疑問視する意見もある。
 受注者との情報の共有は、45%が電子メールによる交換となっており、そのほか31%がCD などの記憶メディアである。受発注者情報共有サーバー等を利用している機関は、4 パーセントであった。なお、共有サーバーを設置しているにもかかわらず、66%は、ファイル名の付け方が組織的に行われていない。
3.5.8 現場通信環境等
 受発注者間における回線状況が、データのやりとりに大きな影響を与えるが、実態として、受発注者間の接続回線状況は、企業者の認識では52%がブロードバンド環境となっている(受注者であるダム建設現場(施工者)認識では、ナロウバンドが57%、ブロードバンドが36%となっており、認識の違いがある)。
3.5.9 ダム管理の観測データ等
 観測データ等については、19%が何らかの方法でシステム化されており、またサーバーにデータを保存しているだけも18%ある。25%はデータについて紙のみの管理を行っている。
 今後の技術開発として、管理システムを構築し、貯水状況や管理状況を迅速に把握できる環境を望む意見もある。
3.5.10 ダム管理設備等の維持管理
 低水・高水管理データとほぼ同様の傾向で、維持管理についてのデータの18%が何らかの方法でシステム化されており、またサーバーにデータを保存しているだけとの回答も14%ある。18%は紙データの保存である。保存していないとの回答が11%であった。
3.5.11 職員異動の技術知識の継続性
 組織内の人事異動に伴って、各個人が蓄積している技術等の知識の引継は、57%が組織的に行っておらず、各個人に任せている状況である。組織的な取り組みとして、何らかの方法で技術的知識を引き継いでいる機関はわずか21%であり、さらにこのうち引き継ぎをシステム化している機関は全体の5%にも満たなかった。技術的知識の引継を行っていないとしている機関も13%ほど存在している。
 発注機関においては、業務工事の保有データについて、検索できるシステムが7%であった。
←前へ   目次へ戻る   次へ→
HOMEに戻る