一般社団法人日本大ダム会議は、平成24年1月4日付で社団法人日本大ダム会議から一般社団法人日本大ダム会議に移行しました。

会長挨拶
橋本 德昭

Noriaki Hashimoto  平成26年2月27日の一般社団法人日本大ダム会議平成26年度定時社員総会後の臨時理事会において、私は同会議の第12代会長に選出されました。何卒よろしくお願い申し上げます。社会人として世の中に出て以来、電気事業に身を置き、主として国内外の水力発電の業務、とりわけ水力計画、開発業務に携わっていたとは申せ、会員の皆様方のダムに関する学識、経験に比べて微々たるものしか持ち合わせない者として、総会当日「会長に選ばれました」と挨拶する際には身が引き締まるどころか、正直申しまして身の縮む思いがした次第です。

 一昨年のICOLD2012京都大会の開催にあたり、地元企業として出来うる限りの協力をと考え、当会議の役職員、会員の皆様方と一緒になって、大会を成功裏に終わらせるお手伝いができたことが、これまでの7年間の副会長時代を通じて、ブラジリア大会で京都招致を決めた選挙と並んで、大きな思い出となっています。しかしながら、京都大会の前年に起こった東日本大震災という未曽有の災禍が当会議にも暗い影を落として今日に至っています。私の出身母体である電力会社は、あの3.11以降、基幹電源である原子力の稼働をめぐって大きな曲がり角に立ち竦んだ状態になっています。原子力の稼働がままならないため、化石燃料費の増大となり、勢い各種経費の削減を余儀なくされてしまいました。

他の電力会社も同様で、当会議の会員に名を連ねるほとんどの電気事業者からの会費が、当面の間の緊急措置とは申せ、減額を余儀なくされる事態となり、結果して当会議も厳しい財務状況に陥ることとなってしまいました。事務所もこれまでの港区虎ノ門から中央区日本橋人形町に今年2月初旬に移転し、経費削減の一助とせざるを得なくなりました。出身団体が引き金を引いたわけであり、これだけでも会長をお引き受けする資格があるのかと逡巡したこともありました。さらには、現在、電力各社は一様に原子力規制委員会に保有する原子力発電所の再稼働の審査を受けている最中にあり、各社土木は活断層や地震動、津波などの評価に明け暮れている毎日であります。私もその中の一人であり、こうした状況下で当会議の会長職を全うしうるのか、会員各位の付託にお応えすることができるのか、これまた私が会長職をお引き受けするにあたり逡巡した要因の一つでありました。

幸いにも、前会長の坂本ICOLDアジア地区副総裁はじめ、副会長、専務理事、常務理事など多くの関係者の皆様方が「当面のことなのだからサポートする」と温かいお言葉をいただき、勇を奮ってこの度会長をお引き受けさせていただきました。

 日本大ダム会議としては、2012京都大会の残務整理を終え、ここしばらくは一息ついている状態と言っては口が過ぎるかもしれません。しかし、京都大会の頃は、民主党政権下での脱ダム政策が全国に蔓延した状況にありましたが、漸く自民党政権に代わって、国土強靭化を目指す真っ当な社会インフラ政策が再開され、ダム事業もまた復活の方向性が明確になってきたことは、国土保全の一翼を担う責めを負う関係者一同、誠に喜びに堪えないものがあります。 ただ、我が国では、治水、利水ともにこれまでにダムは相当量開発されてきており、将来に向けたダムの適地に限りがあることも事実でありましょう。こうした事情を反映して嵩上げなど既設ダムの再開発が主要な方策の一つとなってきています。また最近のダムには積極的な排砂機構などで、湛水池の堆砂対策を予め備えているものもでてきていますが、既設のダムのほとんどが池の堆砂問題に有効な対策を講じえていないのが実情です。

雪の研究で著名な中谷宇吉郎博士のダムの堆砂問題に関する警告(*)を待つまでもなく、新しい湛水池の建設の余地が少ないなかで、既設の湛水池の容量が堆砂で減少していくことは今世紀半ば頃には大きな社会問題になってくるのではないかと懸念しています。堆砂問題の解決は非常に難しい技術的課題であるとともに、流域問題にも係わることでもあります。いまから既設ダムの具体的な堆砂対策を、技術のみならず、社会、環境、法制など関連する各方面から総合的に考究することが不可欠であろうと思っています。

 ポスト京都大会時代の日本大ダム会議としては、そろそろ京都大会開催の疲れも癒えた頃でありますから、上記の堆砂問題に留まらず、ダムに係わる懸案事項を長期的な視野で解決を図るべく、会員の皆様方の英知を集めて幅広く見直していく時期に差し掛かっていると思う次第です。こうした議論を通じて、当会議の更なる活性化を図るとともに、今後の歩むべき新機軸を明確にしていければと願っています。

 浅学菲才な私ですが、できる限りの努力をしてまいる所存です。国土交通省、経済産業省、農林水産省をはじめとする関係各機関ならびに会員各位におかれましては、何卒ご指導、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

(*) 中谷宇吉郎 ダムの埋没―これは日本の埋没にも成り得る (昭和26年)

HOMEに戻る