2007年に「気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovermental Panel on Climate Change)」は地球温暖化問題に関する最新の科学的知見を取りまとめたIPCC第4次報告書を発表した。
第4次報告書は4冊組となっており、第1次作業部会(WG1)報告書(自然科学的根拠)、第2作業部会(WG2)報告書(影響・適応・脆弱性)、第3作業部会報告書(気候変動の緩和策)、及びWG1~WG3各報告書の内容を分野横断的、有機的に統合した総合報告書より構成されている。
総合報告書の要約を簡単に紹介すれば、「温暖化は疑う余地がなく、人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性が非常に高い」「既に温暖化の影響は顕在化していること」「たとえ数度の温度上昇でも大きな影響を受ける分野や地域があること」、「適切な緩和策の実施により温室効果ガス排出量の削減ができること」「温暖化の影響を軽減させるための適応策が不可欠なこと」などを強調している。特に気候変化については「干ばつ、高波、洪水など極端な気候現象のリスクの増加」について懸念を表明している。気候の一部である降雨現象を対象とするダムは、このような地球温暖化に伴う気候変動によりその役割が一層増大すると予想されるとともに、既在のダムの機能発揮に影響が生ずることも懸念される。
国際大ダム会議(ICOLD)は、このため2008年6月にブルガリア、ソフィアで開催された第76回年次例会において「地球気候変動とダム、貯水池、関連水資源」技術委員会を2008年から2012年までの期間設置することを決定し、日本の参加を要請している。
このような状況に鑑み日本大ダム会議としても「地球気候変動とダム分科会」を当面2008年度から2009年度の期間で設置し、気球気候変動の主要な適応策の一つであるダムについて、今後のあり方を検討しようとするものである。
技術委員会“地球気候変動とダム分科会”は平成20年に発足し,222号(平成25年1月号)に「第1フェーズ ダムの安全性」として報告書を掲載しました。その後更に温暖化によってダムが最も効果を発揮できる事項,危惧しなければならない事項について具体的に検討対象を絞り,既存の成果をとりまとめるだけでなく気候変動に伴うダムの新たな役割・機能等についての検討・考察と,気候変動への適応に向けて必要となる研究・技術開発等の進歩を図るため活動範囲の拡充を行うとして,活動を延長、232号(平成27年7月)に「第2フェーズ ダムの機能(治水,利水)」として報告書を掲載した。