活動目的
ダム建設コスト削減およびその効率的資金調達のため海外で採用されている各種の発注制度や契約方式等の事例を調査、研究し、我が国への適用の可能性を検討する。
活動期間
平成15年度~平成16年度(2年間)
活動結果
民間資金調達としては、ダム事業がPFIに馴染まないといわれているが、以下のような問題点に対する対応が整備されれば、PFIによる民間資金調達と民間管理が可能となると考えられる。問題点として
1.初期投資額が大きく、建設工期が長く、また建設中に予測不可能な物理的条件に遭遇する確率も大きいため、総じて建設リスクが高い。
2.事業の地域社会や自然環境にあたえる影響が大きいため、住民リスクや環境リスクが高い。
3.PFIでは、設計施工一括発注が一般的であるが、ダム事業は地質等の自然条件に設計が大きく影響を受ける。十分な調査に基づき設計を実施しなければ建設費の事前算定が困難である。
4.ダム事業の目的は主に治水と利水であり、どちらについても民間事業者に河川管理者としての権限付与が問題となり、新しい法整備が必要である。
5.ダム管理の治水部分は税金により賄われるのでPFIに馴染まない。
これら問題を踏まえダム事業への民間資金調達可能性の検討、民間資金調達の提案を行った。
次に、公共事業における入札契約方式の課題、ダム事業への新しい契約方式の提案を行った。
以下に報告書「ダム事業への民間資金導入と新たな入札契約方式導入に関する検討」の目次を掲載する。(報告書は会誌第196号2006-7に掲載)
第一章 国内外の公共事業をとりまく社会的背景
1.1 日本の状況
1.2 海外の状況
1.2.1 英国
1.2.2 米国
1.2.3 中国
1.3 日本と各国との違い
第二章 公共事業における資金調達
2.1 公的資金の活用
2.1.1 日本
2.1.2 海外
2.2 民間資金の活用
2.2.1 PPP
2.2.2 PFI
2.2.3 IPP
第三章 ダム事業への民間資金調達可能性の検討
3.1 海外ダム事例における民間資金調達の成立条件
3.2 日本のダムへの民間資金調達に関する問題と課題
3.2.1 PFIの類型
3.2.2 初期投資コスト
3.2.3 調査・計画リスク
3.2.4 設計リスク
3.2.5 建設リスク
3.2.6 自然環境・社会環境リスク
3.2.7 ダム施設の維持管理・運営権限
第四章 日本のダム事業への民間資金調達の提案
4.1 民間資金調達
4.2 魅力ある出資・投資機会
4.3 ダム事業のリスクとPFI
4.4 SPCの組成
第五章 公共事業における入札契約方式
5.1 日本における入札契約方式
5.1.1 入札参加資格
5.1.2 入札契約方式
5.1.3 入札契約方式の特徴
5.2 海外における入札契約方式
5.2.1 欧米の入札契約方式
5.2.2 国際金融機関における入札契約方式
第六章 ダム事業における入札契約方式の問題と課題
6.1 日本における公共事業の入札契約方式の問題と課題
6.1.1 問題
6.1.2 課題
6.1.3 民間技術力の活用に向けた新たな入札契約方式の導入
6.2 ダム事業における入札契約方式の問題と課題
第七章 ダム事業への新しい契約方式の提案
7.1 パートナリング手法による新しい契約方式
7.1.1 パートナリング導入の経緯
7.1.2 欧米における取り組み
7.1.3 パートナリング手法の長所短所
7.1.4 日本のダム建設工事への適用
7.2 GMP契約による新しい契約方式
7.2.1 米国の建設工事標準契約約款
7.2.2 GMP契約の概要
7.2.3 GMP契約の詳細
7.2.4 日本のダム建設工事への適用
7.2.5 GMP契約 : 日本の事例
おわりに