3. アンケート集計結果
3.1 概要
3.1.1 ITの基本環境
ダム事業においては、パソコンは1人1台以上が当たり前の状況で、使用OSはWindows である。Windows のバージョンにはバラツキがあるものの、XPと2000バージョンが大多数となっている。
3.1.2 使用ソフトと更新状況
・ワープロソフト: |
:Word が大勢を占めているが、企業者では依然として一太郎を併用している。 |
・表計算ソフト: |
Excel のみと言っていいほど、Excel のシェアが高い。 |
・C A D ソフト: |
部門ごとのシェアの違いはあるが、AutoCAD が多く使われている。ただし、少数派であるが多種のCAD ソフトも使用されている。AutoCAD については、常にバージョンアップして、使い勝手を向上していることが高いシェアの要因であることが伺える。 |
・メールソフト: |
OutlookExpress が大勢を占めている。他にNotes、Netscape などがあるが、自社開発や企業者開発システムを利用している例もある。メールソフトはフリーソフトもあり、種類が多い。 |
各種ソフトの更新状況は、「ある程度の周期で更新」するケースが圧倒的に多い。この理由として、ソフトのバージョンアップはメーカー側で頻繁に実施しているが、使用している側は、経済的な面や、過去のバージョンでも実務的に問題がないため、周りの状況等を勘案しながら、ソフトの更新をしているようである。
3.1.3 電子メール利用環境
受注者である設計コンサルタントや施工会社の本社等における送受信可能メール容量は5~10MB から10~20MB が主流で、無制限に送付できるところもある。企業者及びダム建設現場(施工者)では2~5MB が主流となっている。
受注者側(設計コンサルタントや施工会社)の7 割ほどが条件付きで社外からメールを閲覧できるが、企業者では7割以上が不可能である。
3.1.4 通信、データ交換
通信回線はブロードバンド回線が主流であるが、地方の現場ではナロウバンド回線の選択を余儀なくされ、速度の遅い回線を利用しているケースもある。
外部とのデータのやりとりはメールが主流で、その他にCD・MO での送付伝達がある。メール送付の容量が限られる現場や企業者ではCD・MO の割合が高い。部所内データ通信においては何らかの形でイントラネットが導入されているようである。
3.1.5 ペーパーレス化の実施状況
ペーパーレス化は、全部門で一部実施が7 割ほどであるが、完全な電子化は進んでいない。その背景として既存の資料を電子化する際の費用や手間の問題がある。
3.1.6 電子データの保存と活用
① 測量会社
測量会社において三次元データを取得している場合には、そのデータを三次元のまま活用したとしている割合が42%(5社)、二次元として再利用した割合が25%(4社)となっている。また、それらのデータの活用方法として、50%(6社)が、測量データは座標値として利用するのみで、図面化は汎用CAD による手作業で行っているとしている。地形図作成支援システム等の自動化による再利用は17%(2社)となっている。既存資料の技術情報については、50%(6社)がデータベース化を図っているとしている。
② 設計コンサルタント
設計コンサルタントにおいては、報告書、計算書、図面データの約8 割について電子化された状態で保存されている。事務的な書類である契約書・協議書についてはそれぞれ、37%、65%となっている。事務的な書類については、電子化も進んでいるが「紙」という回答も依然として多い。また、保存されているデータの活用について、社内データベース化の実施状況は全体の73%を占めている。
③ 施工会社の本社等
施工会社の本社等においては、過去の報告書等の55%をファイルサーバーにデータの保存をしている。CD・MO への保存が18%、紙による保存は23%となっている。データベースは100%で何らかの形で実施されている。
施工中物件における情報は、全体の82%がデータベース化されている。これに対して、施工済物件の情報は、95%がデータベース化している。施工中物件の内訳として、進捗状況33%、工事写真23%となっている。また、施工済物件においては、施工図面25%、工事写真22%、品質管理記録16%となっている。
利用方法としては、他ダムの参考資料が60%、技術資料としての利用が31%となっている。また、再利用頻度の高い資料として、施工計画・管理データが55%、技術蓄積資料が27%となっている。
ただし、紙ベース主体の早い時期の施工済物件については、IT の目覚しい発展は最近10 年のことであるので、電子データとして管理されているかどうかは不明である。
④ ダム建設現場(施工者)
ダム建設現場(施工者)においては、過去の報告書や図面は、CD・MO による保存が47%と最も多い。ファイルサーバーへの保存は35%となっている。また、既存データの活用方法として最も多かったものは、資料の再利用が71%となっている。その他、事例収集時間の短縮化が17%となっている。
過去の報告書や図面のデータベース化は91%が実施しているとなっている。
上記以外のデータについては、37%がファイルサーバーへの保存、CD・MO への保存が29%、各自のパソコンが23%となっている。紙による保存は5%であった。
現場内ではLAN を構築し、ファイル共有のためのPC を決めて利用しているとの回答が58%であった。これ以外は、電子メールや記憶媒体を利用して共有されている。
共有フォルダ、共有ファイルの命名について、ルール化しているとの回答は40%であり、各自自由に命名している割合が58%と多くを占めている。
コンクリート・盛立品質管理においてはエクセルなどの表計算ソフトの利用が6~7 割であり、自社・専門業者の開発ソフトまたは市販ソフトの使用は2 割に満たない。操作が容易でかつ高度な処理が可能な表計算ソフトの利便性の高さが示されている。しかし、基礎処理工事の品質管理においては、専門業者の開発ソフトの使用が44%となっている。
企業者への品質管理データの提出は、5 割以上が紙面のみによるもので、電子データファイルを企業者へ提出しているとの回答は、コンクリート・盛立・基礎処理のいずれもおよそ2~3 割と少ない結果となっている。
⑤ 企業者
企業者においては、過去の報告書や図面については54%が紙による保存であり、次いで24%がCD・MO となっている。ファイルサーバーへの保存は8%であった。また、何らかの形で、既存の技術資料についての検索が可能となっている割合は40%となっている。
上記以外の業務・工事データについては、全体の51%が、CD・MO により保有されており、さらに、これらの多くは保存媒体に関わらずその61%が書庫に保存されている実態がある。また、各個人のPC にデータを保存している割合が19%となっている。ファイルサーバーを使用して情報の共有化を実施しているところは13%である。共有化したファイルサーバー内のデータについて、検索閲覧が出来るシステムを構築している機関は全体の7%であった。
事務所における情報の共有化として実施していることは、サーバーへの保存が30%となっている。また、47%がバックアップすら行っていない状況である。また、ファイル名の付け方なども各個人で自由に行われている。
3.1.7 ネットワーク化
ネットワーク化は全部門で進んでおり、結ばれていないのは数パーセントにすぎない。これはイントラネット整備の回答とも整合している。