モロッコ王国はアフリカ大陸の北西端に位置し、大西洋と地中海に面している。モロッコには大きな山脈が4つあり、リフ山塊（エルリフ、最高約2,400m）と南方の3つの山脈（アトラス山脈に属する）である。アトラス山脈の平均標高は3,000mを超え、トゥブカル山 (4,165m)が最高地点であり北アフリカの最高峰でもある。主要河川は、地中海に流れ込むムルーヤ川、大西洋に流れ込むスース川等、10程度ある。降水量は少ないが総発電量の6%は水力発電である。なお、地震は比較的多い。

アトラス山脈より北は地中海性気候（一部ステップ気候）で、アトラス山脈の南斜面はそのままサハラ砂漠につながり、砂漠気候である。アトラス山脈には冬期に積雪がある。最大の都市カサブランカの気温は1月で12.4℃、7月で22.3℃、年間降水量は379.7mm（冬期の降水量は100mm/月に達するが、夏期は1mm以下）である。

(2) ダムの概要

モロッコ王国の全ダム数は104ダムである。高さ15ｍ以上のダムは100ダムあり、その47％は高さ30ｍ未満である。また、全ダムの85％はアースダム、重力式ダム（ほぼ同数）である。

この国の水力による発電出力は1,366MWである。

この国では1980年から2000年までの20年間に69ダムが竣工しており、2000年以降の建設は3ダムと少ない。

(3) 代表的ダム

最大のダム高さは1986年完成のHASSAN 1erダムで145ｍ、堤頂長380ｍのアース・ロックフィルの複合ダムであり、その総貯水容量は262百万m3である。なお、このダムは67MWの発電に利用されている。２番目は1953年完成のBINE EL OUIDANEダムで高さ133ｍ、堤頂長290ｍ、総貯水容量13.8億m3のアーチダムである。これも229MWの発電に利用されている。