委員会・分科会活動/土砂管理分科会
活動目的
ダム貯水地における堆砂問題は、1)ダム貯水容量の減少、2)貯水池上流河道の背砂による洪水氾濫、3)発電等取水口部の土砂埋没問題、4)河川における土砂の連続性遮断による河床低下や粗粒化、5)海岸域への土砂供給の減少などであり、まさに上流から河口にいたる水系全体に係わるもんだいである。既存の堆砂技術を総合的にレビューし、水系全体を考慮したダム貯水池の適正な土砂管理の指針を策定する。
活動期間
平成17年11月~平成19年5月
活動結果

本分科会の特徴は,貯水池の土砂問題を表す用語として,従来用いられてきた堆砂対策, 排砂対策に替わり,土砂管理の用語を用いたことに凝縮されている。すなわち,ダム・貯水池機能の維持のみでなく,貯水池下流に対する土砂管理の視点も視界に入れた検討を行おうというものである。こうした視点は,「土砂管理とダム」主テーマとしたEADCでも取り上げられた。の参加国は勿論,世界的にも広まりつつある視点といってよいであろう。旧聞になるが,わが国でも,平成年に,旧建設省河川審議会の小委員会報告で流域一貫した土砂管理の必要性が謳われて以来,水系とともに,土砂の流れを表す流砂系の概念が着実に普及・定着してきている。具体的には,例えば,適当に土砂を通過させる透過型の砂防ダムの設置や侵食海岸への他地域からの土砂輸送など,分野的広がりを持った動きがみられるようになって いる。上記の基本的な視点のもと,本分科会では,次の事項について検討を行い報告書にまとめた。
1) 貯水池の堆砂調査から粒径別流下土砂量を推定する方法。
2) 1)の方法により得られる粒径別流入土砂量と貯水池建設前河道の土砂輸送能力の関係。
3) 各種排砂対策工法の排出土砂の特性およびコストパフォーマンス。
(報告書は会誌第212号2010-7に掲載)

第1章
1. はじめに
 1.1 検討の視点と経緯
 1.2 報告書の概要
第2章
2 貯水池堆砂の現状
 2.1 貯水池内の堆砂量
 2.2 容量と堆砂量の関係
 2.3 近年の発電ダムの堆砂状況
第3章
3. 粒径別の貯水池流入土砂量
 3.1 土砂管理と堆砂の情報
 3.2 粒径別土砂量と流量の関係の推定方法
  3.2.1 推定の流れ
  3.2.2 必要データ
  3.2.3 粒径別年堆砂量の算定
  3.2.4 堆砂量にマイナスデータがある場合の修正
  3.2.5 全量捕捉成分と部分捕捉成分の分離
  3.2.6 全量捕捉成分の同定
  3.2.7 部分捕捉成分の同定
 3.3 モデルダムにおける検討結果
  3.3.1 対象ダム
  3.3.2 同定による再現性
  3.3.3 部分捕捉成分の捕捉率
  3.3.4 堆砂の間隙率と粒度構成
  3.3.5 α,β 及びQc
 3.4 3章のまとめ
第4章
4. 貯水池周辺河道の流砂環境と満砂ダムの土砂排出特性
 4.1 検討趣旨と内容
 4.2 貯水池周辺河道の流砂環境
  4.2.1 流砂量式土砂量の算定
  4.2.2 QとQs、Qsaの関係
  4.2.3 QとQs/Qsaとの関係及び河床状況
  4.2.4 マニングの粗度係数及び大粒径粒子の影響
 4.3 満砂ダムの流出土砂特性
  4.3.1 検討概要
  4.3.2 堆砂進行と流出土砂量の経年変化
  4.3.3 満砂後の出水における土砂流出特性
 4.4 4章のまとめ
第5章
5. 貯水池堆砂対策の現状
 5.1 アンケート調査の概要
 5.2 堆砂対策の実施状況
 5.3 堆砂対策工法の実態
  5.3.1 掘削・浚渫
  5.3.2 貯砂ダム
  5.3.3土砂バイパス施設
 5.4 5章のまとめ
第6章
6. 土砂排出工法と排出特性
 6.1 検討の概要
 6.2 モデルダムの土砂及び流量の特性
  6.2.1 流入土砂及び堆積土砂の特性
  6.2.2 流入量及び無効放流量
 6.3 掘削浚渫(貯砂ダムがない場合)
  6.3.1 検討条件
  6.3.2 工法別施工量の経年変化
  6.3.3 工法別年平均施工量
 6.4 掘削・浚渫(貯砂ダムがある場合)
  6.4.1 検討条件
  6.4.2 工法別施工量の経年変化
  6.4.3 貯砂ダム規模と捕捉土砂の関係
  6.4.4 工法別年平均施工量
 6.5 土砂バイパス及び土砂フラッシング
  6.5.1 検討条件
  6.5.2 土砂バイパス、土砂フラッシングの効果
 6.6 6章のまとめ
第7章
7. 出工法のコスト・パフォーマンス
 7.1 費用の算定方法
  7.1.1 基本的考慮事項
  7.1.2 掘削・浚渫の費用算定
  7.1.3 貯砂ダム及び分流堰の費用算定
  7.1.4 土砂バイパストンネル及び土砂フラッシングトンネルの費用算定
 7.2 モデルダムにおける各排砂工法のライフサイクルコスト
  7.2.1 掘削・浚渫(貯砂ダムなし)
  7.2.2 掘削・浚渫(貯砂ダムあり)
  7.2.3 土砂バイパス、土砂フラッシング
 7.3 排出単価の工法別比較
 7.4 7章のまとめ
第8章
8. 排砂管システム
 8.1 排砂管システムの検討趣旨
 8.2 吸引部の事例
 8.3 モデルケースによる排砂管システムの検討
  8.3.1 対象とした施設構成
  8.3.2 モデルケースとした排砂条件と施設規模
  8.3.3 施設構造と費用
  8.3.4 排出単価
 8.4 排砂管システムの土砂輸送力
 8.5 8章のまとめ
第9章
9. おわりに─ 今後の課題を中心に─
補足資料A 年堆砂量のマイナスデータの取り扱い
補足資料B 貯水池の河床変動計算(細粒成分の捕捉計算を含む)

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