国際大ダム会議情報
国際大ダム会議(ICOLD)のダムの環境問題に関する見解
Dams and the Environment (“ダムと環境”)

A viewpoint prepared by the ICOLD
(ICOLDの広報パンフレットの和訳)

Dams help manage Water, a critical resources
(ダムは有限な水資源の管理に役立つ)

水は必要不可欠な天然資源である。これ無くして人類は生存できない。5,000年以上もの間、ダムは人類が必要とする水を供給してきた。ダムは人類のために豊水期に水を溜め、渇水期にそれを利用可能としてきた。ダムは町を造り、耕地を耕し、灌漑により農産物を生産するのに不可欠であった。ダムは洪水を溜めて、それを人々とその財産に危害の無いように、また、舟の航行が可能となるよう徐々に放流してきた。そしてまた、電力を町や工場に供給し、レクリエーションの場を提供してきた。
現在、40,000以上のダムが 56億人の世界の人々の生活向上に役立っている。しかし、なお 15億人の人々が衛生的な飲料水を得る事が出来ずにいる。また、24ヶ国以上の国々が国民を維持するに足る水供給施設を持っていない。事実、今日、 10億人が栄養失調または飢餓状態にある。多くの国において、食料増産は灌漑よってのみ可能であるが、その灌漑はしばしば減少しつつある地下水に依存している。従って、現在も多くのダムが必要とされている。また、それによって現存の地表水のより良いマネージが可能となる。
人類の生存にはエネルギーも必要である。今日、エネルギーの大部分は化石燃料によって供給されている。しかし、化石燃料は枯渇しつつある。科学者は我々は空中に有害物質を放出しないで発電する方法を見つけなければ成らないと言っている。水力発電はクリーンである。それはソーラーエネルギーが形を変えたものである。多くの国において、水力は唯一つの天然資源である。今日、水力発電は世界の電力生産の約 20%、エネルギー生産の約7%である。専門家は水力開発ポテンシャルは現在の生産レベルに 6倍はあると言っている。水力発電は現在まで最大の再生利用可能エネルギーであり、地球温暖化ガスを排出しない。言い換えれば、ダムによる水力発電は持続可能な発展のためのエネルギー供給の Keyである。
ダムは飲料水、エネルギー、工業用水、灌漑用水、洪水防御、レクリエーションの場を供給する。しかし、それにはコストが掛かる。増加する世界人口により良い生活を提供する。
我々の探求は我々が自然環境を変えることを意味する。天然資源は人類のニーズに合うように利用され、環境も形を変える。ダムと貯水池が築造される時人々とその生活は否応なく影響を受ける。
数年前、最大限の優先権は人類が直接必要とする水とエネルギーを供給する事に置かれていた。今日、我々は自然環境とそれを保護する必要の重要性を認識している。ICOLDは人類の将来のために、長期的利益のためにも環境を保全しなければ成らないと信じている。
Today’s Dams Reflect Concern for the Environment
(今日のダムは環境に配慮している)
如何なるダム・貯水池築造による社会的環境的悪影響も最低限まで低減されるべきである。今日の専門家は技術や安全問題と同様に環境に取組んでいる。以下に述べているのは、ICOLDのメンバーである計画者や技術者がプロジェクトに取組む時に考慮しているものである。
自然および社会環境問題は計画の第 1段階で真っ先に取り上げられる。
  この問題はプロジェクトの設計,建設,運転の全ての段階で織り込まれている。計画の初期段階から、必要とされる水を長期的に最低のコストで社会に供給でき、かつ、環境に対して最小の影響となる代替案の検討がなされる。ダムは水供給を増やす唯一つの方法ではない。地下水の再注入、海水および内陸部の塩水淡水化はダム無しに水を供給できる。更に、灌漑用水や工業用水利用の効率化も可能である.供給システムにおける水損失を減らす事もかのうであり、使用した水を処理して再利用する事も出来る.このように水使用の効率化も水供給の方法である。
ICOLDのエンジニア―は環境は自分達の責任として取り組んでいる。
  今日、計画,設計、環境調査に多くの異分野の専門家と技術者で構成されるチームが検討のために必要とされ、人類の全知を傾注して環境上問題のないデザインをする事が求められている。
大規模プロジェクトは流域全体とその生態系への影響につき配慮した計画をする事が求められている。
  プロジェクトが大きければ大きいほど自然・社会環境への影響は大きくなる。しかし、多くの小規模ダムは一つの大規模ダムよりも大きな影響を及ぼす事がしばしばある。それは、河川を遮断するヶ所が増え河川が細切れにされるからである。
多くの国々が計画の概念策定の段階で正式な環境影響の確認を必要としている。
  総合的環境影響調査はそれを計画設計に採り入れたり、社会と環境に対する経費を削減する上で助けになる。それを正式には必要としない国でも、そのような環境影響調査から得られる情報を利用すればより良い計画策定が出来る。
大規模計画における便益とコストの厳密な経済分析は政策決定者に有益な情報をもたらす。
  社会や環境への配慮と同じように、便益とコストは政策決定の共通基盤を形成する。自然・社会環境影響コストを含む現実的なプロジェクトコストがプロジェクト便益と対比されなければならない。この場合の便益はプロジェクト収益に加えて、選定された代替案との比較における社会・環境的優位性を考慮した全体的経済に貢献する多重的便益である。
プロジェクトによって移住する人々には注意深い計画と実施によって可能な限り最大の利益を与えるべきである。
  水没移転計画は移転者の生活水準を改善するものでなくてはならない.多くの場合、新しいダムは移住する人々に魚釣り、観光、灌漑農業などの新しい経済活動を提供している。
プロジェクトの効率的計画、実施、運営には関係の一般大衆のコンセンサスを得る事が必要である。
  このコンセンサスはしばしばプロジェクトと環境との両立によって得られる。各種の関係団体、技術専門家、政策決定者の間の自由な情報交換がコンセンサスを得る上で不可欠である。そして、それはプロジェクトの出来るだけ早い時期に実施されるべきである。ダム推進者は地域社会を良くする隣人になり得る。
プロジェクトの環境影響のモニタリングは予測された影響よりも真実の影響の理解を得る上で有効である。
  モニタリングはプロジェクトが完成すると同時に始めるべきである。
現在運用中の多くのダム・貯水池における生態系の調査は将来のプロジェクトのために重要な教訓を提供する。
Many People are involved in the development of Today ’s Dams and Reservoirs
(現在のダム・貯水池開発には多くの分野の人々が参加している)
現在のダム・貯水池を計画し,建設し,運営するには次のような多くの分野の人々が参加している。 ☆影響を受ける人々、及び、プロジェクトの目的に含まれている灌漑、水力電力、上水道、舟運、洪水調節、レクリエーションの受益者。 ☆開発資金を提供する政策決定者 ☆自然環境保護に関係するグループ ☆プロジェクトを推進している技術専門家これらの技術専門家が集まりダムに関する知識と経験を結集して取り組んでいる。
影響を受ける人々、及び、プロジェクトの目的に含まれている灌漑、水力電力、上水道、舟運、洪水調節、レクリエーションの受益者。
開発資金を提供する政策決定者
自然環境保護に関係するグループ
プロジェクトを推進している技術専門家
これらの技術専門家が集まりダムに関する知識と経験を結集して取り組んでいる
1928年に創立されたICOLDはこの知識の交換と討議の場を提供している。81カ国のメンバーを有する ICOLDはダムが安全に、効率良く、経済的に、そして環境影響が最小となるように建設および運営がなされるように専門技術を投入している。
ICOLDは討論や情報交換により、今日ダムに関して発生している問題をダム計画・建設に環境的意識を注入するよう、また、環境影響アセスメントを実施し、その影響を低減する方策を講ずるよう促進し支援している。
このパンフレットはICOLD ’s Position Paper on Dams and the Environmentの縮小版(Short Version)である。
以上 
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