ダムの分野では我が国のダム建設技術のレベルは高く、台形CSGダムの設計・施工、既設ダムの大規模な再開発、堆砂対策技術、ICT施工といった我が国で開発され発展した技術は世界に誇れる技術であると共に、発電事業においても建設から運営に亘るまで大きな能力を持つ。これらの技術・経験をベースに海外のダム事業への技術協力や事業参入が期待される。
しかしながら、ダムにかかわらず建設市場としての海外案件の現状をみると、外国企業との競争環境は極めて厳しい状況にあるとともに、受注した案件でも海外案件特有の様々なリスクを抱えているのが実情である。
このため、ダムの分野について、事業参入の検討段階での的確なプロジェクト評価を含めたリスク管理・分担などの課題の抽出と対応策の検討、海外で日本のダム技術を展開する場合の設計・施工体制のあり方や海外工事特有のリスクへの対応、ファイナンス等に対する官の支援も含めた体制のあり方等を検討するため平成23年度から「海外ダム事業への技術協力と事業参入に関する検討分科会」を発足させるものである。
また、この活動の一環として2012年に京都で開催される国際大ダム会議第80回年次例会および第24回大会において日本が海外にどのような技術をどのような形で発信し売り込むのか、具体的なテーマを決め官学民が協力して技術展示会を活用・運営していきたい。
質の高いインフラ輸出が政府の成長戦略の一環として,積極的に進められている。ダムの分野でも日本のダム技術は世界的にも高い水準にあるが,日本の優れたダム技術をもって,海外,特に発展途上国のダムの建設や管理に貢献できるようにするためにはどのような技術協力や事業参入のあり方が望まれるかを検討するため,この分科会が設置された。
「フェーズ1」(平成23~25年度)では,事業参入の形態として,洪水調節や発電だけでなく流域の農業開発や都市開発も含めた河川総合開発プロジェクトを調査立案から建設・運営までオールジャパンで取り組む「フルパッケージ方式」及び,CSG 工法やダム再生技術等日本がオリジナリティを有する技術を切り口に事業参入を図る「技術提案方式」の二つの方式を提唱した。
「フェーズ2」(平成26~27年度)では,当初,「フェーズ1」で提唱した「フルパッケージ方式」について,既存のマスタープラン等から適当なプロジェクトを選定し,「フルパッケージ方式」を適用した具体的なケーススタディを行うことを目指した。しかしながら,具体的な検討を行う上で必要な情報量や熟度があるプロジェクトが選定できなかったこと,大ダム会議が直接の事業実施主体ではないため,実際のプロジェクトを立ち上げる取り組みには限界があること等から,新規のプロジェクトのケーススタディは断念し,「フルパッケージ方式」の実現に向けた今後の取り組み方法や課題の解決に向けたより踏み込んだ検討を行い,提言として取
りまとめた。
「技術提案方式」については,ワジ(涸れ川)の鉄砲水(Flash Flood)対策のダムにCSG 工法の適用を検討したいというエジプトからの要請を踏まえて実施した技術協力やイランで初めてCSG 工法を採用することとなったAbpa ダムに関する技術協力等の活動内容を活動報告として取りまとめた。
「フルパッケージ方式」については,この活動報告をもとに,今後,関係方面とも協議を進め,提言の具体化に取り組みたいと考えている。