国際大ダム会議情報
国際大ダム会議における(社)日本大ダム会議の活動について
国際大ダム会議(ICOLD)は毎年年次例会が加盟国のいずれかで開催され、そのうち3年に一度は「大会」を兼ねます。年次例会では20ほどの各種技術委員会があり、その各委員会に日本から委員を送り込んでおり、夫々の委員が活躍しています。その他、各年次例会ではシンポジウムやワークショップが開催され、そこに日本から毎年数件の論文が提出されます。また、3年毎の大会には4テーマの課題がその都度設定され、その設定された課題に対して論文提出をします。日本からの課題に対する論文数は各大会とも1520件です。最近における下記の技術報告はわが国独自の技術として多くの海外諸国から高く評価されたものです。
1.兵庫県南部地震におけるダムの挙動
発表:1997年 第19回 ICOLD大会(イタリア・フィレンチェ)
  兵庫県南部地震におけるダムの挙動」田村重四郎、竹村公太郎、藤澤侃彦、永山功、中村昭、鈴木篤
  「兵庫県南部地震における表面遮水壁型ロックフィルダムの挙動と動的解析」早川知夫、中村幾雄、寺田昌史
  「農業用ダムの地震時迅速安全点検システム」増川晋、安中正美、田頭秀和
貢献:兵庫県南部地震における一庫ダム等の挙動について報告し、あれだけの規模の大きい地震においてもダムへの被害は極めて軽微であったことが、世界のダム技術者に大きな感銘と自信を与えた。
2.日本における貯水池排砂システムについて
発表:1994年 第18回 ICOLD大会(南ア・ダーバン)
  「貯水池の排砂システムの予測手法について」手塚昌信、山本純也
  美和ダムの排砂プロジェクト」安藤信夫、寺園勝二、北誥良平
  「日本における排砂設備の歴史と設計法」竹林征三、高須修三 1997年第 19回 ICOLD大会(イタリア・フィレンチェ)
  「日本における堆砂対策について」竹村公太郎、荒井治、藤田信夫
  「貯水池のバイパス排砂システムの計画と設計」原田稔、寺田昌史、小久保哲也
  「土砂バイパス施設分派部の水理的検討」柏井条介、角哲也、本田敏也
貢献;日本における排砂ゲート、排砂バイパスによる排砂技術を紹介し、堆砂問題に悩む諸外国の堆砂対策に大変貢献した。
3.ダム再開発
発表:1994年 第18回 ICOLD大会(南ア・ダーバン)
  「新丸山ダムの嵩上げ計画」永山功、芦田義則、石橋年孝
  「狭山池ダム嵩上げ事業について」金森弥、安藤雅成、木村昌弘
貢献;欧米諸国においてもダム建設適地は非常に少なくなっており、既設ダムを再評価し、再利用しようとの機運が強い。そのため上記のダム嵩上げによる再開発事業の発表は大きな関心を持たれた。
4.貯水池水質浄化
発表:1994年 ICOLD 第18回大会
  「池原貯水池における表面取水施設による濁水長期化軽減対策」岩下修、菊池浩一郎、大西真弘
  「流動制御と糸状藻類を活用したダム湖水質環境創造システム」廣瀬利雄、丹羽薫、久納誠
  成層化した貯水池における曝気・循環装置による藻類増殖の制御」安藤信夫、丹羽薫、寺園勝二
貢献:海外各国とも貯水池の水質改善に努力しているところであり、日本からの上記の発表は高く評価された。
5.コンクリートの長期凍害実
発表:2000年 ICOLD 第20回大会
  「大型試験ブロックによるダムコンクリートの長期凍害実験」国分正胤、小林正己
  「大型供試体の長期暴露試験に基づくダムコンクリートの耐凍害性に関する基礎研究」堤知明、宮本幸始
  「寒冷地におけるコンクリートダム堤体および供試体の長期測定結果について」前田哲宏、高山信紀、土田茂
貢献;黒部ダム、奥新冠ダム、大鳥ダム、奥只見発電所、仙美理ダム、川俣ダム、水殿ダムの寒冷地 7箇所で 1961年以降大型試験ブロック等によるダムコンクリートの長期凍害実験を行っている。このような 40年を越える長期観測・実験は世界に例がなく海外諸国から高く評価されている。この長期研究は東大名誉教授国分正胤先生を委員長とし国土交通省、東京電力㈱、関西電力㈱、北海道電力㈱、電源開発㈱の合同チームにより実施されている。
6.水源地整備国際セミナー
2000年9月(社)日本大ダム会議と水源地対策懇談会の共催で開催した。このセミナーにはアメリカ、ベネズエラ、ノールウエー、イタリ-、中国、韓国、世界銀行から 8名の著名な外国専門家を招聘し、わが国の当時の国土庁、建設省、農水省、電力会社からのダム関係責任者とのダム水源地整備に関する討議を行うとともに、宮ヶ瀬ダムを見学し、水源地整備の実務を視察し併せて地元住民との対話集会も行った。外国からの参加者は一様にわが国に緻密なダム水源地対策に感銘を受け、夫々に各国の今後の施策に大変参考になったと感想を述べていた。
7.その他
(社)日本大ダム会議は国際大ダム会議(1928年創立、82カ国加盟)を通して多くの欧米のダム建設技術を導入し、過去のわが国のダム建設に寄与してきたが、現在では多くの先端技術を開発しているわが国の技術を海外に紹介し、特に、ダム建設を多く必要としている開発途上国のダム建設に寄与している。また、欧米諸国とはダムを巡る環境問題について情報交換を積極的に行い、より良い環境対策の実施に寄与している。そのため、国際大ダム会議の 3年毎に開催される「大会」にはわが国の“ダム建設先端技術と環境対策技術”をまとめた英文冊子“Current Activities on Dams in Japan”(日本のダム事情)を発刊し、大会参加者に配布し高く評価されている。
以上 
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