ダム安全に関する図書のご紹介【世界銀行】

 

  1. ダム安全に関するグッド・プラクティスノート(Good Practice Note on Dam Safety under the ESF) 

 

世界銀行では2018年10月より環境・社会のフレームワーク (Environmental & Social Framework, i.e. ESF) に従い融資事業を行っており、このうちの環境・社会基準4:コミュニティの健康と安全のアネックス1の中でダムの安全について規定されています。今回発行されたダムの安全に関するGood Practice Note(GPN)は新規ダムの建設、既設ダムの修復や世銀の融資事業に関連するダムの安全性の審査など、具体的に世銀の融資事業に関連するダムの安全性をどのように担保していくかについてその基準、手法、手続きなどが詳述されています。特にESFがリスク管理という概念を導入したことに伴い、ダムの安全に関するリスクを評価し管理を行うための手法や手続き等が紹介されています。

 

本編のGPNを補完する7つの技術ノート: i) Hydrological Risk, ii) Geotechnical Risk, iii) Seismic Risk, iv) Small Dam Safety, v) Potential Failure Mode Analysis, vi) Portfolio Risk Assessment using Risk Index; and vii) Tailing Storage Facilities 並びに6つのAppendixes: 即ち4つのダム安全計画のフレームワークのサンプル: i)  Construction Supervision & Quality Control Plan, ii) Instrumentation Plan, iii) Operation & Maintenance Plan, and iv) Emergency Preparedness Plan, と独立的なダム安全評価のサンプル仕様書を2種類: i)新規ダムとii) 既設ダムが併せて作成されています。これら全ての文書は下に添付したリンクからダウンロードできます。

 

World Bank, 2020
Good Practice Note on Dam Safety

 

2. ダムと下流コミュニティの安全性を確保するための管理制度に関する国際比較 (Laying the Foundations: A Global Analysis of Regulatory Frameworks for the Safety of Dams and Downstream Communities)

 

世界銀行は個別の融資事業の中で、関連するダムの安全性を確保や向上させるだけでは限界があるため、当外国のダムの安全を確保するための法制度、組織などの強化を支援すべきだという観点から、先進国、途上国を含む51カ国のケーススタディを行い、各国の政治、経済、社会などの仕組みと対比しながら、ダム安全に関する法制度、組織体制、規制内容等について国際比較を行っています。また、当該国のダム管理に関する体制やポートフォーリオ(規模や種類)などにも着目して、ダム安全管理のギャップ解析やその強化に向けた意思決定支援ツールが作成されています。さらに、上記のダム安全のGPN作成の基礎調査として、各国で行われているダムのリスク管理についても比較調査を行い分析結果をとりまとめています。この図書も下のリンクからダウンロードできます。

 

また世界銀行ではいくつかの国において全国的な規模で既設ダムの修復、安全性の向上のためのプロジェクトを形成、実施しており、こうした分析やツールを用いて、ソフト面での支援も強化していきたいと考えているようです。なお、個別のケーススタディについても優れた事例やニーズの高い国から適宜、発行する予定とされています。

 

Laying the Foundations: 

A Global Analysis of Regulatory Frameworks for the Safety of Dams and Downstream Communities